聖マリアンナ医科大学病院における AEDリモート監視システムの活用と 働き方改革について
聖マリアンナ医科大学は、1971年に「生命の尊厳と人 類愛」を基本理念に設立された、人類の福祉に貢献でき る医師の養成を実践している日本で唯一のカトリック系 医科大学です。当院は、「生命の尊厳を重んじ、病める人 を癒す、愛ある医療の提供」を理念に地域医療の中核を 担う、特定機能病院です。
当院のクリニカルエンジニア部は、さまざまな部署で個別にそれぞれ勤務をしていた臨床工学技士全員を当時の技師長と麻酔科教授がクリニカルエンジニア部としてまとめ、2000年に設立されました。
設立時は臨床工学技士17名、事務員1名でしたが、2019年にはパートを含め34名と増員してきました。一段落した現在、新病院棟、新外来棟のリニューアル計画が始まり、新病院に向けて積極的にさらなる業務改革が求められています。
寄稿くださった清水さんとクリニカルエンジニア部 管理者チームの皆さま
従来のAEDの日常点検方法と日本光電製AEDへの更新
私は当院に設置していた旧式のAEDを購入した際の機種選定には関わっていなかったものの、設置後の保守点検を含む管理をしていました。毎日、院内の本館8フロア、別館8フロアのすべてを歩いてAEDのケースを開け、パッドの使用期限などチェックリストを使用して確認していました。確認後はクリニカルエンジニア部に戻り、データベースに入力するなどの残務処理に最低30分以上はかかっていたと思います。何年か経過してからはチェックリストを使用した見回りは週に1度、人工呼吸器使用患者のラウンド時にAEDの自己診断の結果だけ見るようになりました。
AEDの更新時期になったことを機に、AED Linkage(AEDリモート監視システム ARM-1000※)を利用できるという理由で日本光電のAEDを選定しました。
当時導入していた機種を徐々に買い替えるという選択肢もありましたが、一括管理できるということで、一斉に買い替えることを決めました。
院内AEDの設置とAED Linkageの運用
AEDは院内に25台と関連施設に1台設置され、すべてAED Linkageで管理されています。クリニカルエンジニア部の誰もがAED Linkageを閲覧できますが、基本的には責任者1名が毎日のAEDの状態を把握し記録に残しています。
通常は、出勤時に院内へ入る前にスマートフォンでAEDLinkageの管理画面を開き、AEDの一覧で状態を確認します。「要確認」や「要注意」などのAEDがあれば、職場に入る前に目視で確認します。AEDのほとんどは人が自由に出入りできる所に置かれているため、制服に着替える前でも通勤経路上チェックできるところはチェックします。数ヵ所セキュリティの関係で制服でなければチェックできないところもあるので、この場合は更衣後にチェックしています。
AED LinkageからCSVファイルをダウンロードしての記録管理
院内においては携帯電話回線のアンテナ設置などが行われ、基本的に電波状態は良いのですが、設置状況により通信できない場合もあります。その時には目視での確認を行い、記録しています。パソコンではAED Linkageの管理画面からCSVを出力し、Excelで記録として残しています。
医療サービスのさらなる拡大と働き方改革について-AED Linkageを利用した日常点検を中心に-
休日などは自宅での操作になるので、何かあっても目視での確認はできませんが、AED LinkageのWeb上で確認したものを勤務者や当直者に連絡することができます。
AED LinkageはAEDに異常があればメールで通知が来ます。AEDの状態をいつでも確認できるところが、管理者側からすると安心できるシステムであると思います。しかしながら、異常があってから通知を受け取るだけではなく、正常な状態も確認できているというAED Linkageの姿勢が大事であると思っています。
いつでも誰でもどこからでも、同じ情報を必要時に確認できるAED Linkageは、医療現場では非常に重要だと考えられます。
当院でもIT化のための通信網が充実し、院内のほぼすべての場所で2.4G、5G帯のWi-Fiとすべてのキャリアの携帯電話回線がつながります。
情報の共有こそが、日々進歩する医療業界に重要な要素ではないかと思われます。
従来の点検では30分以上かかっていた日常点検の業務効率を上げたAED Linkageは、働き方改革に寄与するひとつの形であると考えています。